6月例会報告
17歳
―高校生たちに未来はあるのか―
お話:佐久間清先生(市内県立高校教員)

≪はじめに≫
 最近17才の少年による凶悪犯罪があいついで起こっています。その「17才は今どのような様子なのか」ということを話してほしいとの依頼でしたが、日頃から鈍感で、加えて細かい分析をしているわけではありませんので、何を話していいのかわからないでいます。そこで、最近の高校生を取り巻く状況の中で、高校入試と進路選択、つまり「入り口と出口」について話を進めていきたいと思います。そのあたりから、今の高校生のストレスの原因が探せればなあと思います。なお、これから出てくる数字は、私のつたない記憶によるものなので、多少の間違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

≪バブル景気が学級減に拍車をかけた≫
 高校生の数は減少を続けています。高校入学者のピークは89年で、その頃までは新設校もできましたし、各校で学級数も増やされました。それでもまだ足りずに、8789年は1クラスの定員を45人から47人に増やされました。
 その後は入学者の数は減り始め、各校で学級減になりました。松戸南高校でも、90年までは1学年10クラスでしたが、91年は8クラス、9295年は7クラス、9697年は6クラス、98年からは5クラスとどんどん減らされてきました。また1クラスの定員も少しずつ減り、今では40人となっています。
 この学級減(定員減)の原因には、高校生の数の減少のほかに、バブル景気といわれた好景気が大きく影響しています。好景気により私立志向がかなり高まってきました。聞く所によると、中学3年生の高校志望者のうち6〜7割が私立を第1志望にするとも言われていました。
 そんな中で公立高校の志願者は減り、学級減をしているのにそれでも定員割れという学校も多くなりました。本校でも93年から97年まで大幅な定員割れが続きました。95年からは推薦入試も導入されましたので、95年からの3年間は推薦、一般、2次という3回の募集にもかかわらず、定員を確保できないという状況でした。
 このような志願者減少は全県的な傾向で、高校の教員にも危機感のようなものが漂っていました。一人でも多くの志願者をということで、多くの学校では体験入学を実施したり、教員による中学校訪問が行われるようになりました。

≪バブル崩壊とともに≫

 そんな好景気も去り、不景気がだんだん長期化していきました。それでもまだ「バブルが弾けた」頃は、それほど影響もありませんでした。しかし多くの会社で経営が厳しくなり、「リストラ」という名の首切りが横行してくる頃になると、状況はかなり変わってきました。公立高校を第1志望とする受験生が増えてきたのです。やはり個々の家庭では経済的に厳しいところが多くなってきたのでしょう。それでも全県的に学級減はまだ続いていましたから、各校で競争率も高くなってきました。
 本校でも98年に久々に一般入試までで定員を確保でき、2時募集を行わずに済みました。志願者が増えたことと並んで、私立に合格して受験を取り消す受験生の数がかなり少なくなりました。そして翌99年には一般入試で50人ほどの不合格者を出してしまうほどでした。
 この9899年は、推薦入試ではほぼ全員を合格にし、それで定員の約半数の合格者を決めました。推薦の定員は全体の3割なのでルール違反でしたが、定員割れを何年も経験しますと、入学後も頑張ってくれそうな受験生を不合格にするのは、なんとももったいない感じでしたので、あえて定員を大きくオーバーした人数を合格にしました。
 00年の入試を迎え、県教育委員会より「推薦入試の定員を厳密に守れ」という厳しい指導が入りました。本校でもそれに反することもできず、推薦入試で多くの不合格者を出しました。「こんなに落として、一般入試で志願者がいなかったらどうしよう」と多くの教員は心配していました。しかしそんな心配をふっ飛ばし、一般入試でも多くの志願者が集まり、70名ほどの不合格者を出すほどでした。

≪高校に入れない生徒はどこに?≫

 例年以上に志願者が増えたのは本校ばかりではありません。多くの公立高校で志願者が増え、定員割れをするところはかなり少なくなりました。この地区の全日制の高校で2次募集を実施したのは2校だけでした。
 では、一般入試で不合格になった生徒はどうしたのでしょうか。定時制を含めて2次募集の学校に出願する生徒もいるでしょうが、到底全員を受け入れるほどの募集はしていません。中学浪人や、やむなくアルバイト(正社員として就職はもっと難しいでしょうから・・・)をするようになるのでしょうか。
 今どの高校でも学級減されたことで、空き教室がいくつもあります。だから新採用の教員を多く採用すれば、いつでも多くの生徒を受け入れることは可能です。そういう状況でも、なお学級減をし、教員の採用はごく少人数に抑えられています。こんな行政の「安上がりの教育」のために、中学を卒業する生徒たちの未来を奪っていると思うと、かなり腹立たしく思います。

≪就職ができない≫

 次は卒業後の進路の話に移ります。本校では大半の生徒が就職を希望しています。以前はなかなか大学には入れないということもありましたが、大学進学者はごくわずか、専門学校を含めても進学する生徒は少数でした。
 好景気の頃は就職状況も好調でしたが、こちらもバブル崩壊とともに大きく落ち込みました。94年から求人数は激減し、その後も減少を続けています。バブル崩壊以前の92年(私が本校で初めて卒業生を出した年)、求人は2000社を越えていました。それが99年には400社ほどになっていました。特に女子の就職はむずかしく、就職希望者の大半が未定のまま卒業していきました。
 加えて就職難のときは会社でも余裕がなく、ていねいに面倒を見てもらえない場合も多く、早々に退社してしまうことが多いようです。 それに対して進学は、とても入りやすくなりました。就職が悪くなるのと同時くらいに専門学校は、医療系や美容など一部の人気学科を除いてほぼフリーパス状態になりました。そして大学・短大の方も99年あたりから、かなり入りやすくなりました。生徒減による定員確保が難しくなったのは、高校ばかりでなく大学にも広がってきたようです。
 私たち高校の教員からすると、大学へ入りやすくなったのは嬉しい限りです。ただニュースなどで大学生の就職状況も厳しいというのを聞くと、ただ就職の問題を先送りしているだけかなあという気もしてきて複雑な気持ちです。
 このような状況で、「ここで頑張れば、未来が開けそう」という展望を高校生たちが持てるのでしょうか。自分たちの力の及ばないところで起こっていることで、自分の人生が翻弄されているという気持ちになっても不思議なないかなあと思います。

≪人生を生き抜く力を≫

 今の生徒たちはパワーがなくなってきているなあと思います。「無気力だ!」とまで言う人もいます。授業を静かに受けることができたり、大きな問題行動が減ってきたりと、教員の立場からは指導しやすい生徒になっているようです。しかしその反面、部活動への参加者の激減にも見られるように、何かに興味を持ち、力を入れて頑張るような生徒はかなり少なくなっています。部活動もやらず、アルバイトもせず、ただ友だちとダラダラと過ごしたり、家で一人でテレビやゲームで過ごす生徒も少なくありません。
 「指導しやすい生徒」といいましたが、文化祭などの行事ではパワーのなさが災いしてきます。「笛吹けど踊らず」とはまさにこのことで、担任がいくら励ましても乗ってこずに、シラけたまま終わってしまうということもよくあります。「この子たちは卒業してからも、ちゃんと生きていけるのだろうか」という心配までしてしまいます。でもそんな人生を生き抜く力を高校でつけなければいけないのだろうとも思いつつ、何もできずに日々が過ぎることを情けなくも思います。
 また生徒たちは数年前と比べても、友人関係作りがうまくできなくなったようです。ほとんどの生徒たちが携帯電話を持ち、しかもかなり頻繁に連絡を取り合っている様子は、かえってどう友だちと心を通じ合わせていいのかわからないことの裏返しのようにも思えます。興味を持って打ち込むものがなく、友だちとの付き合いも安定したものではないと感じると、日頃の不安もなかなか解消しないことでしょう。加えて前に触れたように、高校への「入り口も出口」も厳しい状況ですので、なおさらストレスの溜まることでしょう。しかもこのような状況は、今までいわゆる優等生でいた生徒までもが抱えている問題です。このくらい高校生たちにとって、不安材料の多い社会なのかなあという気もします。

≪終わりに≫

 ある中学校の先生がこんなことを言っていました。

子どもたちに「君たちには明るい未来がある」なんて言ってきたが、実際にそんなことはない。子どもたちの周りにはつまらない大人ばかり。そしてやがて子どもたちもそんなつまらない大人になっていく。

 この話を聞いて、私自身胸を締め付けられるような思いでした。では子どもたちに明るい未来の展望を持たせるにはどうしたらいいのでしょうか。それは子どものためとかではなく、私たち大人が生き生きと暮らせる社会を作ることではないでしょうか。そして一人一人が精一杯楽しい人生を送ることが、次の世代を担う子どもたちに、大きな希望に満ちた展望を与えることではないでしょうか。

 子どもの社会は大人の社会を鏡で写したものです。大人の社会を変えなくして、子どもたちを変えていくことなんてできません。社会を変えるなんて大それたことを言いましたが、まずは自分自身楽しい人生を送りたいですね。それが社会を変えることではないかと信じています。

佐久間先生が立派なレジュメを作ってきてくださったので、そのままここに転載しました。来春から、県立高校の学区の変更や学力試験が1日で行われるという変更があるので、入り口はますます厳しい状況に。入学を希望する子どもたちを全員受け入れることはできないものでしょうか。教育にもっとお金をかけてほしいですね。先生を増やすことだけで、状況は随分変わってくるのですから。(浅井)