5月例会報告

松戸を心のふるさとに

―内藤昭一さんと松戸市の教育について語りましょう―

5月27日松戸市民劇場にて

 参加者の自己紹介を兼ね、日頃感じていることや疑問に思うことを出し合うことから会を進めました。

・教育委員会って何をするところ?

・子どもの問題で委員会の方と話したとき、意識のずれを感じた。

・教育委員ってどのように決まるの?

・子どもの事件でいろんな機関に相談した時、加害者側のケアをするシステムがなかっ
た。

・学校現場では、校長先生は上からの命令を伝達するだけで、保護者の声はどこへ行っ
てしまうのだろう?

 このような疑問も含め、内藤さんにお話していただきました。

【内藤さんのお話】

 地方の教育行政は、「地方教育行政の組織と運営に関する法律」(略して地教行法)に基づいています。県の教育委員会、市町村の教育委員会があり、地方の教育行政の根幹をなしています。
 教育委員は5名、市町村長が選任、議会で承認されて決まります。(以前は公選制でしたが、政党と同じになってしまい、偏らないよう今の形になりました)
この5名の互選によって、教育長が決まり、教育委員会議で決まったことを執行します。教育委員会は行政法に基づく行政委員会ですから、月一回の定例会議を開き、事務方より出された議案を審議承認します。ただし、予算権は市長部局であり、人事についても権限は限られています。 
地教行法が施行され
50年になり、地方行政のあり方が大きく見直されています。中曽根内閣の時、教育改革が掲げられ、臨時教育審議会の答申で指摘されたことが、10年たって改めて見直され、具体的にどうしていくか示されました。この3年間で、知識偏重から生きる力を育成する教育へ、5日制、教育内容のスリム化、教員養成など様々な答申が中央教育審議会などから出されました。
文部省、県教委、市町村教委、学校という中央集権体制から、公教育も地方分権の流れがあります。
例えば、県の教育長は文部大臣、市町村の教育長は県教育委員会の任命承認が必要でしたが、この制度をやめようということになりました。
 また、学習指導要領で学習時間、内容などすべて決められていましたが、総合的な学習の時間では、学校独自で自由にしてくださいというように、少しずつ変化しています。学校評議員制度を置いてもいいということになりました。
教育委員会と学校の関係も、指導監督という縦の関係から、学校が自立するよう支援・協力という横並びの関係に変える。こういうことが地方教育行政改革の大きな柱になっています。

 松戸市の教育を考えるには、日本社会全体の欠陥と通じるものがありますから、その病弊を見定めて、どうしていこうということになると思います。社会全体の、行政も含め様々な組織で、個々には良くやっているが、横の連携・コミュニケーションがない。それに情報公開と結果責任を問われない国です。(金融問題で明らかなように)学校も本来なら、地域住民や父母に対し教育方針・学事計画を説明し、結果報告があるべきです。そういう経営形態に変えていかなければいけない。
 松戸では4月に機構改革を行い、学校教育と社会教育が並列していて、連携システムがありませんでしたが、生涯学習本部という中で一本化される仕組みになりました。最近、学級崩壊は幼稚園の自由保育のせいだという声を聞きますが、幼稚園と小学校の関係は今まで全くありませんでした。小学校と中学、更に高等教育と、一貫性が当然あるべきです。
 課題は山積みで本当に大変ですが、問題を整理し、優先順位を決め、限られた予算の中でどうしていくか見直しています。まず 学級崩壊の問題。市内小中高69校の実態調査を行っています。学校は抱え込もうという体質がありますが、先生個人の責任で解決できる問題ではありません。致命的な状況になる前に、先生が一人で抱え込まないようなシステム作りが必要です。
今まで縛られていた学校が自由になって困っている姿もあります。学校が自立するには、地域住民との連携がますます求められます。一足飛びに行かなくても、少しずつ経営形態を変えるため、きちんとしたシステムを作り、そのシステムをよく運用していく努力をしなければいけないと思います。



フリートーキング

P)学校評議員制度について、松戸はどのように?
―現在、先進的に行っている地域など参考にして、勉強中の段階です。

P)教師と父母の組織であるPTA抜きにはありえないと思う。現在もPTA・町会長・校長・民生委員などの集まりはありますが、あまり機能していない。

P)地域という認識があいまいだと思う。学校評議員に地域の代表として、どういう人を出すか。地域づくりのできているところでは代表を自分たちで出していけると思う。〇〇長という肩書きではなく、一人の住人ということが大事。北小金地区で、子どもたちを共に育てたいという思いを持つ人たちで、北小金教育コミュニティ会議を作っています。外の人間をいれようとしない学校ですが、世代間交流を授業に入れていただき、地域の人が学校に行くようになり、子どもとの交流が持てるようになった。子どもにとっていろんな大人に出会え、ああいう人になりたいという声も出てきます。大人の方も、道で出会った時、子どもに声を掛けられるようになります。

P)小金原地区では教育懇談会、子どもまつりをやっています。

P)学校だけでなく、町内会の婦人部、子ども部などでもやれることがある。

PPTAの学級という小さな単位でも、共にクラスを作っていこうということから始められると思う。

P)卒業してしまうと、学校には親はどうも行きづらい。現役の方が、PTAOB、地域住民と一緒にという姿勢が欲しい。

P)地区によって、小中学校の先生、保護者で懇談会をやっているようですが、システムとしてある?
―松戸では自主的にやっている地区もあるという状態です。

P)地域づくりは地域住民でやらなければと思いますが、現実に今まで何のコミュニケーションもないところでは、手だてすらない状況です。どこでも出来るよう立ち上げるためのサポート支援が必要な気もする。
―中央教育審議会の答申の中にも、教育委員会の役割としてかかれていますが、本来自発的であるものだと思います。

学校図書館司書、外国人の子ども達の日本語教育についてなど、話題は尽きませんでした。もっと子どもの具体的な様子を交えて話したかったという声もありましたが、行政に携わる立場の方とのこのようなざっくばらんな話し合いの場は、今まであまりなかったように思います。今回の例会は第一歩。快くお越しいただいた内藤昭一さんに感謝と共に、何か明るい気持ちになりました。そして今後もぜひこのような場を作っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。 (まとめ:保浦喜代美)