2001年6月例会報告

松戸市の教育は今、そしてこれから…

 教育委員会から指導課2名、学務課2名、企画管理室1名の合計5人の方が出席してくれました。最初に、前もってお渡ししていた質問事項にそって、松戸市の現状と今後の方針を話していただきました。
 長くなりますが、あまり要約せずにまとめを載せました。ちょっと量が多いですが、最後までぜひおつきあいを!

Q)総合的な学習にすでに取り組んでいる学校はありますか。あるとしたら、そこではどのように取り組んでいるのでしょうか。来年度からは全校で導入されるはずですが、どのように導入されるのでしょうか。

【指導課 杉橋さん】

A)取り組んでいる学校はあります。昨年度から移行期間になり2年目になります。総合的な学習については、指導要領でも積極的に取り組んでほしいという内容できておりまして、小中学校でもすでに取り組み始めています。
平成12年度末に調査をした段階では、小学校で43校、中学校で16校取り組んでいます。平成13年1月の調査段階では、平成13年度に取り組むとしているのは、小学校47校、中学校19校という状況です。
 どのように取り組んでいるのかというと、現在の学習指導要領によると、総合的な学習の時間という時間枠は教育課程の中にはありません。新しい指導要領ではクラブ活動の時間がなくなるのですが、(なくなるといっても時間枠がなくなるということで、各学校で適切な時間が学校に応じて設けられますが)この特別活動については今年度からクラブ活動はないという新指導要領でスタートしてますので、その時間を活用して総合的な学習に取り組んでいるというところもあります。それから各教科移行期間で削減されている内容があり、その削減内容の時間を活用して取り組む。あるいは学校裁量の時間を活用して取り組むというように、学校に応じて時間数等はまちまちですが、市内のほとんどの小中学校で取り組み始めているというのが現状です。
 総合的な学習の時間にどのようなことを学習するのかというと、あくまでも新指導要領では『生きる力を育てる』ということが大きな目玉になっています。各教科でもそれを育てることが必要ですが、総合的な学習の時間には大きな2つのねらいがあります。一つは『自ら課題をみつけ、学び、考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てる』、もう一つは『学び方やものの考え方を身につけ、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにする』という2つのねらいがあります。このねらいに即して活動が行われるということです。
 内容的なものとしては、指導要領でも例えばとして、国際理解教育、情報教育、環境教育、福祉・健康教育、地域に関するもの、児童生徒の興味・関心に基づくものなどがあげられています。
昨年度末の調査で、松戸市内の小・中学校でどのようなことに取り組んでいるかというと、国際理解教育関係で15校、環境教育が25校、情報教育が14校、福祉・健康教育が20校、地域が40校、興味・関心に基づくものが36校、その他25校という数になっています。(一つの学校で重複して取り組んでいるものも含めた数)
来年度本格実施されると、小学校3・4年生が105時間、5・6年生が110時間、中学校1年生が70〜100時間、2年生が70〜105時間、3年生が70〜130時間(選択教科の時間を何時間とるかによって幅が出てくる)、総合的な学習の時間が設けられます。
現在、中学校で修学旅行へ行く際の事前の調べ学習などに適用したり、あるいは、職場体験学習のことなどについて、この時間を活用するという例もあります。

Q)奉仕活動や体験活動をどのような形で、導入するのでしょうか。

【指導課 杉橋さん】

A)現在も体験活動は、社会科・理科という教科の中で多く取り入れられていますが、新指導要領の目玉として、体験的な学習、問題解決的な学習に積極的に取り組むとされています。指導要領では、総則の中の『家庭や地域社会との連携を図りながら、ボランティア活動や自然体験活動などの豊かな体験を通して、児童・生徒の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない。』という道徳の中での位置づけ、あるいはこれから始まる総合的な学習の時間で自然体験やボランティア活動などの社会体験、観察・実験、調査・発表等、そういうことの中で体験学習・問題解決的な学習を積極的に取り入れることという位置づけがされています。また、特別活動の中でも勤労生産・奉仕的行事などという項目もあります。そちらの中でも勤労の尊さや生産の喜びを体験すると共に、ボランティア活動など社会奉仕の精神を涵養する体験が得られるような活動を行うという位置づけがされています。
 各学校は、これらのことにもとづいて、各教科あるいは総合的な学習、そういうあらゆる場面において、体験を通して学習するという取り組みが始められています。今後ますますそれが活発になってくると思います。
 奉仕活動については、新聞報道によれば、内容や期間は教育委員会や学校の判断に委ねたとなっていました。中身については、これから検討して行くことになると思います。

Q)今年度から始まった千葉県のセカンドスクール推進事業とはどんなものでしょ うか。松戸市内で導入されているのでしょうか。

【指導課 伊藤さん】

A)県のセカンドスクールプランというのは、現在行われている宿泊を伴なう授業として行われている林間学園・修学旅行などに加えて、宿泊をともなってねらいとしては子どもたちに人間関係の重要性を体感させる、その中で社会生活に必要なルールやマナーを学ぶ、要するに「生きる力」を総合的に育ててみようじゃないかというふうなことで始められています。すべての学校で行われるわけではなくて、市の教育委員会の推薦に基づいて、となっています。今年度は、6月3日〜5日に中部小学校が手賀の丘の自然の家へ行っています。予定としては、11月に古ヶ崎南小が行う予定です。林間や修学旅行と違うのは、市教委の中に事務局を置き、学校代表、手賀の丘の人とで実行委員会を作って、そこで行う内容を考えていきます。行う内容は、@学校の自主企画プログラムA共同作業をするプログラムB授業の三つで、その中で何を行うかは実行委員会で話し合っていきます。必要な経費は、県の実施になるので、県の社会教育課それから千葉県の社会教育施設管理財団との交渉により決まります。中部小で実際どのくらい経費がかかったのかまだ報告が来ていないので、わかりません。

Q)少人数学級の実現への松戸市の考えはどんなものでしょうか。

【学務課 相磯さん】

A)教職員の配置は、国の標準にしたがって県が基準を定めてという制度で行っています。松戸市もその制度に沿って行っています。
 しかし、特別な事情がある時は学級編制を弾力的に運用できることがあり、千葉県では生徒指導上の困難な学校等についてきめ細かな指導を要する場合に弾力的な運用を行っています。
 また、1年生から2年生に、5年生から6年生に進級する時修了式で在籍数が確保されていれば、その後転校する子どもがいても学級数を確保できるという運用も行っています。

Q)習熟度別の少人数授業を取り入れている学校はありますか。あるとしたらどのような形で実施していますか。

【学務課 相磯さん】

A)少人数学級は、今年度から新しく導入され、県も今年を少人数教育元年としています。松戸市には、小・中学校あわせて42校(小学校26校、中学校16校)に少人数担当教員が加配されました。
 その中で習熟度別学習を計画しているのが、小学校10校、中学校2校です。
習熟度別学習については、子どもの発達段階や単元の内容等に応じてどのように行うか各学校で検討しているところです。
教科については小学校は国語と算数、中学校は数学です。
実施形態は、1学級を2つのグループに分け複数教員で指導したり、1学年2学級を3グループに分け学級の枠を越えた指導を行ったりしております。

Q)通学区域の見直しと、学区の自由化についての松戸市の考えは?

【企画管理室 松田さん】

A)平成11年度、学校の適正規模検討委員会が設置され、教育長の諮問を受け答申を出しました。それによると、松戸市内においては、学校規模としては12〜24学級が適正な規模ではないか、通学距離は小学校では1q以内に学校があり、概ね市民の合意が得られているのではないかという答申が出されました。その答申にしたがって、今学区の適正化を視点にして検討しているところです。町も非常に変化してきており、町づくりにあわせて通学区域も常に変動すると考えています。学区審議会で随時検討しながら、通学区域も見直されるというシステムになっています。
 学区の自由化については、松戸市は現在謳っていませんが、いじめの問題であるとか、身体的な理由・精神的な理由など、相当の事由がある場合は学区を変更できるようになっています。相当数のものが学区を変更しているのが現在の状況です。
 自由学区は、保護者が学校を選択することになるので、教育委員会や学校がそれなりの情報を保護者に提供しなければならないだろうと考えます。例えば、特定な部活動への入部を希望して学校を選択した場合、入学した時に教員の人事異動があって指導方針が変更される場合が十分にありえます。そういうことを考えると、学校からの情報提供というものがどうあるべきか、どんな情報を提供していけばよいのかということを考えていかなければならないし、あるいは自分で選択した学校なのですから、その結果への自己責任を持つということを市民の皆さんの共通なコンセプトとして得られるかどうかということもあります。検討の余地がたくさん残されている問題だと思います。今年度 教育改革市民懇話会がスタートしましたが、この中でも自由学区の問題は議論がされることと思いますので、より多くの市民の方から意見をいただきたいと思います。 

Q)地域住民がボランティアとして学校に入って来ていますが、ボランティア導入の基本的な理念とその状況について、お聞かせ下さい。

【企画管理室 松田さん】

A)今、小学校の方に読み聞かせという形で入っているということも聞いています。外国籍児童への日本語支援や学校行事へのお手伝いという形のボランティアで地域の方たちにお手伝いしてもらっているようです。
 理念というと難しいところがあるのですが、子どもの立場、市民の立場、学校の立場、行政の立場などいろいろな面から考えていかなくてはなりません。
 子どもの立場から考えると、より多くの人が子どもたちを見守っているという姿勢を示すのは大変教育的なことだと思います。子どもたちには社会の変化に対応する力を身につけるという言葉で教育が行われていますが、それを突き詰めると、ジェネラリストよりスペシャリストという生き方が求められてきているということでしょう。地域の人たちの専門的な知識・技能に触れる機会があることは、子どもたちが生涯にわたって生きる力を身につけるために大きな支援になるのではないかと思います。
 市民の立場からいうと、生涯学習社会というのが今メガトレンドになっています。『学ぶ者からする者へ』『受ける側から与える側へ』というのが成熟した生涯学習社会のありかただと思いますので、そういうことから考えると、地域の方が長年培ってきた知識や技能を学校教育の中に役立てていただくというのは、大変大きな意義を持っていると思います。
 学校の立場からすると、開かれた学校ということで地域に大きく人材を求めていくということもありますし、開かれた学校というのは、誤解を受けるやすいのですが、私は知識・知恵の交換だろうと考えています。地域と学校とが互いに知恵を交換し合うというのが開かれた学校の大きなスタンスになってくると思います。ボランティアが入るということは、子どもたちのために地域の知恵を頂くという面で大変効果が高いと思います。
 行政の立場からいうと、今市民の要求というものが多様化しています。市民が学んで来られたことを生かしていただくということは、大きな意味があると思います。
 ボランティアという形でどんどん学校に入ってきた場合に、池田小のような事件もありましたし、ただどんどん入ってくればいいというものではないのではないか、教育課程という学校の計画に基づいて行っていくこともありますし、そういった面も考えていかなくてはなりません。今のところ文部科学省から指針が出されているわけでもありませんし、今後の課題になってくると認識しております。

Q)学校図書館の司書の現状は? 2003年に司書教諭発令になった時どう取り組むのでしょうか。

【学務課 遠藤さん】

A)この件は指導課の担当になりますが、平成9年度からスタートして、現在6名の司書を市内68校に学期に1回ずつ派遣しています。一回の派遣の日数は4日間で、1日5時間です。仕事内容は、学校図書館の充実と活性化を図るという意味から、図書の整理・整頓、修理、貸し出し事務、児童への図書利用についての助言、購入図書・廃棄図書選定への助言、図書委員会活動への助言等です。
 司書教諭発令については、12学級以上の学校規模に必ず配置となります。現在のところ、司書教諭の資格をお持ちの先生方は、小学校で81名、中学校で28名いらっしゃいます。

Q)県の地域ミニ教育集会について、昨年度の反省と今後の方針をお聞かせ下さい。

【指導課 伊藤さん】

A)県の長期ビジョンの中に入るのですが、正確には『学校を核とした県内1000ヶ所ミニ集会』といいます。県内のすべての学校で行うとされています。
@地域コミュニティの再構築、地域で生活している人々の幸せに感じられる環境づくりA学校を中心として家庭や地域と協力し合える関係づくりB地域に開かれた自主的な学校づくり、この三つを趣旨として行っています。
 学校主催ですから 運営方法・企画については、学校が考えます。会場も原則として学校を使うことになっています。昨年度は11月に集中して行われましたが、今年度は時期を限定していません。予算については設定していませんので、各学校が工夫して行います。
 昨年度は市内すべての学校で実施しましたが、いろいろな世代・立場の人が集まって話し合ってみたところ、いろいろな考え方の違いがあるのだということを認識できたとか、ギャップを認識できると同時に、それを互いに出し合うことでより身近に感じられるようになった、お互い子育てに苦労してることを知って分かち合えて自信が持てるようになったというような意見が出ております。どの学校も形としては話し合うことを中心に持たれています。話し合いの前にその材料として子どもたちの活動を見たり、講演会を持ったりなど工夫している学校もありました。今年度は、7月6日に全部の学校の計画が出されてきます。去年の反省として、広報活動にもっと努めなければいけないとか、日程・時間の工夫が必要ということなどが出ています。

Q)千葉県の教育長期ビジョンの中にある地域教育懇話会とはどんなものですか。

【企画管理室 松田さん】

A)地域教育懇話会は、千葉県教委が地域住民や中高生対象に直接話を聞く会を設けて、今後の施策に生かしていこうというものです。地方出張所が単位になって推進していき、だいたい2年に1回開催しようと考えていますが、船橋・東葛地区は規模が大きいので、毎年度実施して行こうということになっています。昨年は、東葛出張所では松戸市を会場にして、社会教育についての懇話会を行ったそうです。 

Q)学校評議員制について、松戸市はモデル校を設定して学校評議員制を導入する方針とお聞きしましたが、具体的にお聞かせ下さい。

【企画管理室 松田さん】

A)学校評議員制を導入するためには、法整備が必要になってきます。次に運用要綱の整備も必要です。法整備については、今年の3月の教育委員会会議で『学校管理規則』に「学校に学校評議員を置くことができる」というふうに条文化しました。この規則に基づいて、学校は希望すれば評議員を置くことができるように整備されました。ところが実際に運用場面になると、評議員の身分をどうするか、例えば準公務員として扱うのかなど、いろいろ難しいところがあります。その身分的なところをどう扱うかなどを含めて委嘱要綱を整えていかなくてはなりません。今その整備にかかっているところです。
 内容として、学校評議員がどういう活動を行えばよいのかということを、拙速を避けるために、希望のある学校にモデル校として設定して研究にあたってもらおうと考えているところです。 

Q)地域・家庭・学校のつながりを深め、信頼関係を築いていくために、PTAは今後より重要な役割を持つでしょう。PTAについてはどうお考えですか。PTAと学校評議員制とのかかわりもお聞かせ下さい。教職員を対象としたPTAについての研修を行っていますか。

【企画管理室 松田さん】

A)PTAというのは社会教育法の第10条に示されている社会教育団体という位置づけを考えています。社会教育というものは、主として青少年や成人に対して行われる組織的な教育活動というものですので、PTAの一般的な解釈はそこで行われるものと考えています。
 学校が学校としての機能を十分に果たして行くためには、保護者の皆さんとの連携・協力は欠かせない、第一義的な要素になってくるだろうと考えています。学校の運営に対する保護者の方の支援も不可欠ですが、それが評議員と直結することが望ましいかどうかということについては、まだまだ研究の余地があるのではないかと思っています。例えば、評議員を公募によって決めている市もありますし、シンクタンクとして評議員を設置しているところもあります。あるいは学校経営を考えるにあたって、PTAと学校評議員の両方から意見を聞いてそれを参考にするようなシステムを構築しているところもあります。いろいろな形のものが全国的に展開されているので、どういった形がいいのか研究していきたいと考えています。
 教職員を対象としたPTA研修は現在行っておりません。大学等で社会教育主事を得るための研修(教員を対象とした研修)で扱われているということは聞いたことがあります。 

【先般の池田小事件について】

 松戸市としても、これについて様々な取り組みをとっています。起こった直後には、安全点検を各学校に指示しました。今もその指示を行っていますが、小学校低学年の教室に防犯ブザーを配布できないかどうか検討中です。市民の方からスクールポリスを置けないかという意見が寄せられましたが、それも今後検討していく一つにしたいと考えています。地域の方にも学校の安全について関心を持って頂いて、今まであったこども110番の家を改めて地域の方々に周知徹底を図ることも考えています。行政全体で学校の安全に取り組んでいきたいと考えています。

参加者とのフリートーキング

《習熟度別学習について》

現在TTでやっているところが多いように思います。どんな形で習熟度をやっているかということは、今年初めて導入されたので、1年間を通じて課題はなんだったのか、成果はどうだったのかということを見極めながら、来年以降よりよいシステムを学校自身考えていくようにしてほしいと思ってます。

先程、加配されている先生の数をお聞きしたけど、加配というのは少人数教育担当として各校に1人ずつということでした。習熟度別学習に取り組んでいるところ以外はどうしているのでしょうか。

課題別グループ学習に取り組んだり、TT(チームティーチング)に取り組んだりしています。

松戸市の予算で先生を配置していることはありますか。

市の予算で配置しているのは、32名。特殊教育の補助教員として入っています。

先生が増えるのはとても嬉しいのだが、子どもがどういうふうに分けられてしまうのか危険を感じてしまった。子どもの発達段階で見えるところと見えないところがありますよね。そのへんをどういうふうに見分けるのだろうか。結局振るいにかけてしまうのではないかというイメージを持ってしまう。いろいろ違う子がいてというところで学んできているのに、習熟度別に分けられてしまうと教育の目的が違ってきてしまうのではないかと感じる。

子どもが学んで行く中にはいろいろなタイプがあると思います。お金に換算するとすぐ計算できる子とか、筆算で縦に並べると計算できない子とか、いろいろな思考パターンがあります。それがどんどん拡大していっている状況があります。単にテストの点数で分けるのではなくて、いろいろな子どもの特性にあわせて、子どもの思考パターンなどを把握しながら、それに生かせるようなグループ分けをして対応していくというのも一つの習熟度別学習になるのではないかと思う。

時間をかければわかる子やパッとわかってしまう子やいろいろいるから、やり方によってはプラスになる面もあるだろうが、学校で子どもたちが学ぶ時には、子どもたちが互いに教え合うという協同学習の面が大きくあると思う。いろいろ違う子どもたちが、互いのいいところを評価したり、足りないところを補ったりしあってという点で、いろいろなタイプの子どもがいるというのは大きな意味がある。

1年生の学級がまだ成り立っていない時期に導入してしまったら、大丈夫なのかという不安や疑問がある。むしろTTの方が、子どもたちをきめこまかく見ることができるし、子どもたち同士の教え合いもできるのではないか。

根本的な理念としては、子どもたちの隠された能力を引き出していきたいというところにあって、そのためにはどんな方法がよいか、各学校で模索するのも課題になってくると思う。

県の方に少人数学級検討会議というのがあって、そこで13年度は千葉県内で8校(小学校6校、中学校2校)を研究協力校として選んで、どのようにしたらより有効な活用ができるかを今調査研究しています。その報告が現場にされてきますし、それぞれの学校の地域性・特色・子どもの実態などを加味して、より良い方向に行けばと思っています。

保護者に対して説明をするだけではなくて、こういうような形で意見を交換する場を持って合意して行かないと、単なる説明だけでは反発が出るでしょうね。互いの共通理解を積み上げていってほしいですね。 

《学校図書館司書の配置について》

総合的学習を行うには学校図書館の役割は重要になってくると思いますが、司書教諭が発令される段階で現行のシステムは終わりになるのですか。
一学期に1回4日行くくらいでは、とても授業のサービスなんかできないですよね。書棚はきれいになるかもしれないけど、司書が巡回してくるその成果は目に見えて来ないです。巡回ではなく、一つの学校にきっちりと司書が配置されれば、他の学校はそのうち司書が入るという希望を持ちながら、配置された学校ではしっかりと成果が出たと思うのですが。司書教諭は充て職で置かれるだけで専任で置かれるわけではないので、担任を持ち、教科を持ち、そして司書教諭の仕事をすることになる。例えば、担任を外すとか、教科の時間を減らすとか、そういうことができるような状況ではない。6人の司書では少ないですが、せめてこの制度を司書教諭発令後も続けてほしいと思います。今後は、市が配置しない限りは学校に司書は入りませんから、ぜひ長期的に計画を立てて、学校を豊かにするために努力してほしいと思います。

読み聞かせに地域の人がボランティアとして入っている学校もあるようですが、学校図書館に人がいてボランティアが入るとしっかり運用できます。近隣の市川などでは司書がいて、学校図書館がボランティアを募集してそこで運用しているので、とても効果的に子どもたちにとってもいいのです。

総合的な学習は来年から、小学校3・4年生で年間105時間(週3時間)行われるということですが、子どもたちが主体的にテーマを設けて、調べて、いろいろな体験をしたりということで、学校図書館の役割は今以上に大きなものになりますが、今の学校図書館の現状でその役割が果たせるのかなと思います。

情報の提供という点では司書がいるかいないかで大きく違うと思います。

松戸市の教育予算をもっと子どもたちのために使ってほしいと思います。

総合学習でいうと、情報機器の活用も大きな課題になっています。インターネットを全校で活用するということで、接続するまではいったんですが、運用までには至っていません。

いろいろ考え方があって、地域の図書館の機能をもっと充実させろという声もあるし、学校図書館を充実させて地域に開放するという考え方もあるし、学校の複合化という意見もあります。学校をもっとスリムにして、図書館の機能も地域に預けたらどうかという声もあります。総合的に松戸市の教育を考えて、どこに投資したらよいかを考えている段階です。

地域の公共図書館と学校図書館は連携してほしいけれど、役割は全く別なものです。 

《松戸市教育改革市民懇話会について》

松戸は今年を教育改革元年として位置付けていますが、市民の方の意見を聞きたいということで、教育改革市民懇話会を設けました。今年度に6回会議を行なう予定になっています。広く市民の皆さんに教育に関する考え方を問うて、総合的に生涯学習という視点で考えていきたいと思ってます。ぜひ傍聴してください。

傍聴される方をオブザーバー(意見は言えるが票決権はない)として考えて、参加していただく方がよいのではないかという意見もあります。委員の方の合意を得なければならないので確実なこととしては言えませんが、市民の方たちの意見をどう反映させていったらよいか真剣に考えています。

傍聴者が意見を述べることができたら本当にいいですね。

形式的な市民の参加ではなく、実質的な市民の参加というシステムをぜひ作ってほしい。 

《学校ボランティアについて》

悪く取ってしまえば、地域の人たちに無償でボランティアに入ってもらうことで、松戸の教育予算の低さを補ってもらおうとしているのではないかと思ってしまうのですが。ただ地域の人たちが学校に入っていくことで、子どもたちは親や先生以外の大人と触れ合う時間が持てるというメリットはあると思う。やはり運用面で指針があった方が良いと思います。

ボランティアについて指針を考えなければならないとなったら、ボランティアがやる側の押し付けのような形に捉えられてしまっているのではないかと感じました。本当のボランティア社会の成熟に向けて、どんな姿があるべきかと考えていかなくてはと思いました。

今、行政主導でボランティアが入ってきていますよね。ボランティアというのは本来自発的なものでしょう。学校の中で、父母と先生方とのコミュニケーションがうまくいっていて、その上で父母の中から自発的な動きが出て来て取り組みが積み重ねられてくるものだと思うのだが、学校からいきなりボランティア募集が来て、できる人がやってみようかというのが現状。行政主導だと市民のただ働きがあてにされているのかなと感じてしまう。

学校と地域との関係で自然に出てくるのならいいのですが、上から下へという流れが見えてくると疑問に感じてしまう。

PTAは本来、子どもたちの幸せのために父母と先生方が信頼関係を作っていく場ですが、往々にして後援会的なPTAになっているところが多い。例えば学校の花壇をきれいにするためにPTAの予算からお金を出したりしています。本来なら行政の予算の中から出すべきものをPTAが肩代わりしている。それと同じように、お手伝いに親が出ることで、先生をもっと配置してほしい、少人数学級を実現してほしいという親の願いが実現されなくなるのではないかと心配してしまう。

学校は地域で一緒に作っていくものだから、親はその為の労力は惜しまないが、それは行政がやるべきことをきちっとした上でのこと。

体験学習や総合的な学習の中で、地域の人たちとの交流や、地域の人たちの専門的な知識に触れるという目的を持って、授業の中で取り組むというのはいいと思うのですが。

授業で児童・生徒の指導に取り組むには、免許が必要です。教育の一貫として、地域の人たちに授業に入ってもらうためには、特別非常勤講師として入ってもらうというシステムになっています。先生がいて補助的な立場で入る分には問題ないのですが。読み聞かせでも、正規の教員を外して単独で継続的に行なうことはできません。例えば保健の先生が、年間計画の中で学級に入って授業を持つ時でも、特別非常勤講師として申請してもらっています。 

《学校の安全管理について》

池田小の事件にお母さんたちが過剰反応しています。地域の人が学校に入る時にはネームプレートがいるのではないかとか、何か必要なのではないかと、我が子のことになると過剰反応してしまう。その結果、管理的なところにいきがち。そうすると名札を着けている人は良い人、そうでない人は悪い人というような識別を子どもたちに与えてしまうのではないか。

学校の安全管理に力を注ぐあまり、市民を相互監視するようなシステムを作ってほしくないな思う。例えば職員室を校庭の見えるところに移動させるだけでも効果的だし、学校の塀を全部取っ払ってしまうことでかえって地域の人たちから見守られるようにするとか、開いてしまうことで逆に見通しをよくするという守り方もあるという意見もある。そういう方法を追求して行く方がよいのではないか。

空き教室を地域の人たちに開放するということはどうなっているか。

開かれた学校の中で、地域に学校施設がどう活用されていかなくてはならないかということは、資源の再配分ということで市民懇話会の大きなテーマにもなっています。少人数学級とか総合的学習のためにまた教室が必要になって来て、余裕教室は減ってきています。 

《総合的学習について》

総合的学習の達成目標はどこに置いているのか。評価はどうするのか。

達成目標は決められていません。評価はしていきます。評定ではなく所見の中で言葉による評価をしていきます。発達段階に応じて、この程度の力をつけて行こうということを各学校である程度決めた形で取り組んで行くことになります。 

《学区の自由化について》

学区自由化すると地域が壊れてしまう。学校というのは、そこに通う子どもと親と地域の人たち皆でつくって行くものだから、学校を選ぶということは自ら学校をつくるということを放棄してしまうことだと思う。できあがったより良い学校を選ぶという意味では、自分たちで学校をつくっていこうという意欲はわいてこないのでは。

学区の自由化によって廃校に追いこまれる学校もあるのではないか。

新聞報道などによると、品川区では結果として伝統的な大規模校に集中して、小規模校には人が集まらなかったようですね。

学区の自由化については、いろいろな情報を市民に提供して、市民と一緒に考えていってほしい。 

《学校評議員制について》

国の提起したやり方だと、校長先生が選んで、校長先生が意見を聞きたい時だけ評議員に意見を聞くという形。そのやり方でどれほどの効果があるのか。

他の市でやっている形としては、シンクタンクのような形で弁護士などの専門家が学校経営上のアドバイスをしていけるような配置にしているとか、あるいは、完全に私立学校の理事会のような形にして運営を一緒に考えていくようにしているとか、いろいろあります。各学校5人の評議員を置くことにした市もあるし、8人の評議員でその中に公募の市民をいれるようにした市もあります。そういう情報を集めながら、どういう評議員のあり方が松戸市にあった方法なのか、松戸市としては何が課題になっているのかということを煮詰めたいと思っています。

内容が多岐にわたり、話を深める時間が足りませんでした。そして、松戸市の考え方を聞くだけにとどまり、松Pとしての要望や、提案をあまり出せなかったことを反省しています。今後の例会の中で、もっと学習し、語り合って、市民の側からの提案を出していけるようにしていきたいと思います。