2001年2月例会報告

新年度から少人数授業
―いったいどんなふうに? 習熟度別学習?―

4月から導入される少人数授業について、松教組の嶋村先生にお話をうかがいました。

《千葉県の教職員の定数配置について》

 

今の義務制の小・中学校の教職員は、県の職員と市の職員がいます。

県の職員―校長、教頭、担任、専科の先生、養護、事務(二人のうちの1人)、一部の栄養士

市の職員―事務(2人のうちのもう1人)、栄養士(全校配置するのに県職の栄養士の先生では足りない部分を市職で補っている)、用務員、小学校の給食調理員(中学校の給食調理員は殆どが民間委託なので市職ではない)

 いわゆる教師といわれている中には、校長・教頭と、担任と専科の教員がいますが、国から配置されるのは学級数×乗数、これは標準法で決まっていますが、その給与は国が二分の一の国庫負担、残りの半分は県が負担することになっています。

学級数以外の教員を増置教員といいますが、例えば小学校の1学年2学級(全校で12学級)のところは全校で1人の増置教員しかつきません。校長・教頭・担任プラス1人しかつかないということです。松戸市内の小学校は殆ど23学級以下ですから、増置教員は1人か2人しかついていません。中学校は教科担任制ですから、もっと細かく学級数によって多少幅があって、増置教員も小学校より多いです。

 こうやってついている増置教員の他に、千葉県単独でつけている教員がいます。2000年度では310人配置されていますが、これは千葉県が全額給与負担しています。学級編制とか、生徒指導とか、帰国子女とか、いろいろな理由で配置しているのです。今年から小学校1年生から2年生になる時、学級編制基準を本来なら始業式に来た児童の数で何学級かを決めていたのですが、様々な運動があって、千葉県独自の措置で、一年生の終業式にいた人数で次の年の2年生の学級数を決めるというふうに変わりました。実際に措置されたのはほんのちょっとだったんですが。全県で9学級です。3年生からは適用されませんが。

 標準法で配置される教員と県単独職員で配置される教員と、それに加えて、国が定期的に定数改善で配置される教員がいます。今年で第六次が終りますが、第六次で配置された教員が千葉県で合計998名。その内755名(松戸は33人)がティームティーチングで配置された教員です。

 
《第7次定数改善で、小・中学校で27,000人が配置されます》

これは5年間かけて、今後子どもたちの数が減る分 教職員を減らさないで、今の数を維持して定数改善していくというもの。この定数改善で小人数授業を、学級規模を30人とか35人にするのではなくて、40人学級のまま教科によって学習集団を小グループ化して、そして20人程度の授業をやろうというもので、初年度は27,000人のうち4,500人が配置されます。この内の160人が千葉県に配置されますが、千葉県には80市町村あって、行政管内で言うと12出張所あるんです。松戸市にくるのは多分一桁でしょうね。

 国では、去年の5月に「教職員の配置のあり方等に関する調査研究協力者会議」の答申が出されて、この答申に基づいて第7次定数改善が具体的に予算化されたのですが、この報告書には40人学級がまだ妥当だと書かれています。学習集団を小グループ化して小人数授業を行うほうが効果的であると書かれているのです。

これを受けて、文部省の予算方針の動向も受けて、千葉県も県教委の諮問機関である小人数学級検討会議で、小人数教育についての中間まとめを出しました。このまとめにも「国は40人より引き下げることは望ましくないとしている。以上のことから、本県としては、現段階においては現行の学級編成基準を維持していくこととする」と書かれています。いわゆる基本教科(小学校で言えば国語と算数、中学校では英語、数学、理科)を今の学級編制基準のまま、学習集団を小人数化してやることが効果的だと打ち出しています。

 第7次で配置される千葉県の160人では、上記のような文部省や県の方針に添ってとてもできませんから、千葉県は第6次で配置されたティームティーチング(松戸市では半分のところで配置されているのですが)を第7次の小人数授業に変えてしまおうとしています。これで今現場は混乱しています。

 小学校低学年で教科を絞って、2学級あったら2学級を三つのグループに分けてやらないと教員を加配しないと県教委が説明しましたから、今までTTで学級の枠を壊さないで二人で指導していたようなところも、2学級3グループ展開と変えて希望票を出してしまいました。それで今になってあちこちで、来年度どうやってやろうかと。

たとえば、一年生が入学してすぐに2学級でスタートして、国語の時間に「三つに分けます」なんて言ってできるのかなと。しかも、同時に展開すると言うことは、学年全クラス時間割を合わせなければならない。今になっていろんな問題が出て来ています。ところが、他の都道府県に聞いてみると、文部省が最初に出してきたいろんな授業形態があり、その中には学級を壊さないで1クラスを2人で教えるということもあり、と書いてあるんです。他の自治体ではそういう形も含めて希望をとっています。千葉県の場合は、国の方針に忠実にわざと絞っているのです。

 教育現場の中に、正規に採用された教職員と、市で採用された市費の教職員と、国から緊急雇用で雇われた臨時職員と、もう一つは文部省が臨時で雇った専科教員(これはほんの少しですが)がいて、いろんな人たちが入ってきています。分かりづらいです。国の労働政策として、学校内にも臨時職員を増やす傾向がありますね。東京都の場合は派遣業者から来ている臨時職員もいます。

 

 京都市では、前倒しで3学期に小人数授業を試行実践をしました。各学校の裁量を無視して、「こうやれ」と言って試しにやったので、現場は大混乱でした。実践的には習熟度別学習というのはやりようによっては、否定的な部分ばかりではなく、子どもたちがわかるようになったというのもあるのですが、上から半強制的にやらされたので、出てきたのは否定的な評価ばかりだったそうです。6年生でやれといわれたところは、卒業式を前にして学年や学級で取り組むことはたくさんあるのに、学級裁量の時間がまるで使えなくなってしまって、それができなくなってしまった。

 千葉県の中で、中学校の数学の授業で、ある単元の問題を発展的な問題、普通の問題、基礎的な問題というような3つの問題のグループにわけ、それを生徒たちに自己選択させるという取り組みをしたところがある。やってみたら、子どもたちは、友だち関係でグループ選択をしてしまうそうです。

 

Q)そうすると、今年の4月から習熟度別の小人数授業というのが実施されてしまうのですか。

A)全部の学校ではありません。加配された学校だけですから、松戸でいうと33校、プラス数人来ますから、例えば7人来たとしたら、40人。3分の2弱の学校で実施されることになります。

Q)4月からやるということは、今の時点でどういうふうにするということを各学校で決めているのですか。

A)どういうふうにやるかということは、かなり詳しく計画書を提出させられるんです。教育委員会が月曜日に臨時校長会を開いて、火曜日にはその計画書を提出しろと言ったものだから、殆どの学校は教員がそれを知らないのです。話し合う時間がなかったので校長か教頭・教務の先生が、言い方は悪いが勝手に書いて出している。ある中学校では、4月から数学を2学級を3グループに分けて授業をすると計画書を提出しているのに、教員がそれを知らない。

Q)教える側の先生がどうするか決める時に参加していないのですか。

A)参加していませんね、ほとんど。一部の小学校では、昼休みに臨時に教職員が集められて、こういう文書が来ているのだがと説明された学校もあるようです。その学校では、教員が「そんな小学校低学年から、習熟度は無理だ。制度的な学級崩壊です。生活集団があって、その中に学習集団がある。発達段階からいって、低学年では生活集団=学習集団するのがいいわけで、だから教科担任制ではなく学級担任制になっている。子どもの発達段階を考えて、計画したとは思われない。うちの学校ではいらない」と蹴っ飛ばしたそうです。1校だけだったそうです。あとは、とにかく1人でも教員がほしいから、みんな希望を出してしまっている。

 東京都では、いろんな形態で希望を取っているので、千葉県のような学級枠を壊して小人数授業を行うという希望はほとんどなくて、教育委員会は困っているそうです。TTのような学級を壊さないかたちを希望するのは多いそうです。中学校では学年で時間割を揃えるのは至難の技ですし。

Q)小学校1年生で、教科によって教室を移動するなんて大変なことだと思うのですが。

A)県教委自身も、小学校1年生の最初からは習熟度は無理だと言っています。

Q)それなのになぜやらせるんでしょう。習熟度別以前に、入学したばかりの子どもが自分の教室をここは自分の場所とわからない内から、教科によって移動することになるのでしょう。他の授業でも移動してしまわないかな。なんか、徘徊を促しているみたい。

Q)小人数授業のために加配された先生は担任を持てないのですか。

A)この人が小人数のための配置と異動するわけではないんです。第6次でついたTTの先生も、TTとして異動するのではなく、動いた先で加配された人数がプラス1されているんです。TTを誰がやるかは学校内で決めます。

Q)我が子は来年度新1年生なのですが、就学時検診の時45人だったんです。このままいけば2クラスですが、入学式までに毎年5人くらい減ると言うんです。そうすると1クラスになってしまいますが、小人数授業で加配された先生を担任にまわして2クラスにするということはできないのでしょうか。

A)できないですね。加配するためにこういうふうに使いなさいと縛りをかけていますから。都道府県によっては学級を維持するために加配教員を使うことがあるようですが。

Q)市独自で、臨時職ではない教員を採用することはできないのですか。栄養士の先生は市採用の先生がいるのと同じように。

A)教員を採用し、任命しているのは県なんです。施設の設置者は市です。本来だったら、設置者負担主義で言えば、教員の配置も給与も市が出さなくてはならないのです。三輪先生の話によれば、昔は全部設置者負担主義だったんで、市町村が教員の給与も負担していたそうです。ところが、財政力が市町村によってばらつきがあるので、それを是正するために、国が法を決めて、都道府県で採用し、国がそれに補助を出すようにした。

Q)何故そういうふうになったのかという初心に帰って、本来は市が教職員を採用して、市が給与を負担すべきものを、義務教育が自治体の財政力によってばらつきがでては困るので、国庫負担法というのができたのでしょう。財政力があって、市独自で教員の採用ができるところを制限することは本来の趣旨に反するのではないでしょうか。最低限のレベルを保障するために国庫で負担する仕組みができてきたならば、それにプラスアルファされるものについては、どんどんやっていいよというのが本来のあり方ではないのかしら。地方分権の流れはそういうことだったのではなかったのですか。

A)市町村の教育委員会が県の教育委員会にこういう学級編制を認めてほしいという認可事業だったのが、同意事項になりました。市教委と県教委が同意すれば、市町村独自でやれるんです。 今、雇用の問題とか、失業率の問題とか、若い人たちの就職口がないんですね。30人学級にすれば、国としても一石二鳥なんですよね。若い人たちの雇用も拡大できるし、子どもたちの教育条件も更に前進するし、それなのに国は40人学級にこだわっているんですよね。

Q)どうしてですか。

A)やっぱりお金を出したくないんです。小・中・高校で一斉に30人学級にするには、1兆2千億円かかるそうです。でも、段階的にやればそんなにかからないのです。

40人学級の時にも段階的に導入したんですよ。

Q)小人数授業で加配するのなら、加配された人が担任を持てるようにして、一年生だけ学級を増やすということはできないのかしら。

Q)小人数授業は教科を限ってということだけど、それ以外の時間は何しているんですか。空いてるんですか。

A)週20時間以上授業を持たなければならないんです。加配された人も普通の担任くらいは授業を持つことになります。おっしゃる通り、加配だけしてあとどうやるかは各学校の裁量にまかせるというやり方が、一番有効な税金の使い方です。それは千葉大の三輪先生がずっとおっしゃっていることです。県や国が枠にはめ込んで加配するのではなく、各学校によって事情が違うのだから、その学校で例えば生徒の1・2名の転出で学級減になるという時に、加配された教員を充てて、学級数を減らさないようにするとか、その学校の教職員の合意してすすめればいいと。今こういうふうには使えないんです。加配教員というのは、監査の対象になるのです。計画書通りにやらないと、目的外使用ということになる。不正に使ったということになって、次の年から配置されなくなってしまいます。